2016/07/26

なぜ比呂は高速スライダーを投げなかったのか―『H2』の結末・最終回について


夏なので『H2』を読み返していたが、やっぱり面白い。
高校野球漫画として大傑作なのはもちろんのこと、今回は恋愛作品としての結末、すなわちひかりが主人公の比呂ではなく英雄を選ぶというエンディングに考えさせられた。

初めて『H2』を読んだときは、この終わり方に結構な衝撃を受けた。
主人公は比呂で、メインヒロインがひかり。あだち充(に限らないが)マンガの定石として、2人がくっつく以外の終わり方は想像していなかった。
しかも最後の試合(甲子園準決勝)で、比呂は英雄を三振に取ったのだ。試合に勝ち、勝負にも勝ったのに、恋愛では負けた。こんな終わり方をする野球・恋愛マンガは他に無いのではないか?

しかし今回じっくり読み返して、この展開は決して突飛ではない、必然的な結末だと思い返した。
すなわち『H2』は、「比呂がひかりに(ちゃんと)失恋するまでの話」なのである。