もともと自分はRPGというジャンル自体に苦手意識がある。しかしこの『ゼノブレイド』シリーズは世間でもとりわけ評価が高いため、これなら自分でも楽しめるかも……と期待があったのだが、やはりダメだった。
これはおそらく『ゼノブレイド2』というより、自分と(J)RPGというジャンルの相性の問題だろう。
この記事では、なぜ自分が『ゼノブレイド2』を楽しめなかったのかを考えたい。性質上ネガティブな内容になってしまうが、あくまでゲームをより楽しむための建設的な考察として捉えてもらいたい。
カットシーン(ムービー・イベント)が多い&長い
(『吉田戦車のゲーム漫画大全 弟』より) |
↑の吉田戦車の4コマを見るに、「イベントシーンが長い」ことへの揶揄(不満)はすでに『ファイナルファンタジー6』(1994年発売)の頃から一般的だったようだ。
あなたはゲームのイベントシーンが好きだろうか? 私は、端的に言えば嫌いだ。
なぜなら、私はゲームをするときはゲームをしたいからだ。つまり、自分の操作でキャラクターを動かしたり敵を倒したいからコントローラーを握るのであって、一方的に流されるイベントシーンを眺めたいわけではない。イベントやムービーを見たいなら映画を観る。
だがRPGというジャンルにおいては、むしろイベントシーンは主役として扱われているようだ。これが、自分のRPGに対する苦手意識の根っこにある。
私はキャラクターを「操作したい」のだ。プレイを通じて物語を体感したい。しかしRPGの作者は、ストーリーを「見せたい」と思っている。ここに齟齬がある。
『ゼノブレイド2』も「大作RPG」の例にもれず、イベントシーンが非常に多く、長い。 イベントとムービーの合間にたまに操作させてもらえる、という印象だ。
問題なのは、イベントが小刻みに挟まることである。
『ファイアーエムブレム』シリーズのように、ゲーム部分とイベント部分がはっきり分かれていれば「今はムービーを眺める時間だな」と割り切ることもできる。
しかし『ゼノブレイド2』は、イベントが終わったら少し移動、そしてイベント、少し戦闘、そしてイベント……と断続的に操作不能な時間が挟まるため、集中力がブツブツ途切れてしまう。結果、ゲームの操作にも物語の鑑賞にも没入しきれない。
移動が面倒&作業
だが、「マップの探索」が嫌いなわけではない。『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』や『HITMAN』などの優れたゲームは、マップに魅力的なオブジェクトやギミックが散りばめられており、ゲーム性にも関わってくるので、自然と辺りを散策したくなる仕組みがある。
だが一般的なRPGのフィールド移動にはゲーム性はない。単なる作業だ。本作も例外ではない。
『ゼノブレイド2』では、マップ上に次の目的地を示すマーカーが常時表示されている。しかし方角と距離は分かるものの、本作のフィールドは立体的に道が分かれている構造が多いので、残念ながらあまり役に立たない。
戦闘が単調・システムが非直感的
確かにグラフィックや音楽・ストーリーも大事だ。だが戦闘に比べればどれも刺し身のツマでしかない。戦闘こそがRPGのゲーム性そのものなのだ。
しかし問題なのは、要素が多いことではなく、システムのルールがいずれも非直感的なことだ。
例えば本作には「ドライバーコンボ」というシステムがある。
これは敵に「ブレイク」「ダウン」「ライジング」「スマッシュ」という属性の技を順番に当てるとダメージが増えるというコンボシステムだ。
しかし、この説明を聞いて1回でコンボの順番を覚えられる人がどれぐらいいるだろうか?
なぜ「ブレイク」の後に「ダウン」を撃つとコンボが繋がるのか。「ダウン」の後に直接「スマッシュ」だとなぜダメなのか。まったくわからない。
理由はない。ただ「そう決まっているから」というだけだ。これなら「1」「2」「3」「4」という名前にしてくれる方がよほどマシだ。
私は当然、このコンボの順番を1回の説明では暗記できなかった。そしてこの説明チュートリアルは、ストーリー中1回しか聞くことができない。理解させる気がないとしか思えない。
ゲームのルールは直感的であるべきだ。
例えば『ポケモン』では「火は草に強いが水に弱い」という相性のルールがある。火は水をかけられると消え、草は火をつけると燃える。小学生でもすぐに理解できる。
だから草むらから「ナゾノクサ」が現れれば、炎属性の技を撃てば良いのだと誰でも分かる。これが「直感的なルール」の好例だ。
いかにも火に弱そう |
特定の属性の必殺技を順番に当てるとコンボが繋がり大ダメージ! というシステムで、例えば最初に炎属性の攻撃を当てた場合は炎or水属性の攻撃でコンボが繋がり、炎で繋いだ場合は炎or光、水で繋いだ場合は 炎or氷でフィニッシュとなる。……って覚えられないよ!
『ゼノブレイド2』の戦闘のスタートラインに立つには、まずこのような非直感的かつ不自然なシステムを(「理解」というより)丸暗記しなければならない。
しかしなんとか覚えたところで、(自分がプレイした限りでは)どんな敵に対しても「ブレイドコンボで属性玉を付与→ チェインアタックで破壊して大ダメージ」という同じ作業を繰り返すだけであり、攻略性を感じることはできなかった。強力な技を使うたびにQTE的なミニゲーム(ボタン連打や目押し)が挿入されるのにも辟易とした。
本作に限らず、QTEというシステムへの呪詛はゲーマーにとってはおなじみだろうからここでは繰り返さないが、なんというか『ゼノブレイド2』のQTEをしていると「なんでこんなことしてるんだろう……」という根源的な虚しさを感じてしまうのだった。
どんなRPGならできるか
逆に言えば、「イベントシーンが短く」「移動が楽で」「戦闘が単調でない」RPGなら楽しめるということになる。
先日記事を書いた『新・世界樹の迷宮2』がまさにそうだった。イベントはあっさり、街の施設はメニュー画面からワンボタンで飛べるし、ボス戦は高い戦略性と攻略の自由度がある。
SRPGだが、『ファイアーエムブレム』シリーズもこれに該当するだろう。FEは戦闘パートとイベントパートがはっきり分かれているため、メリハリがありプレイしやすい。マップ移動は基本的になく、戦闘も戦略性に溢れている。
他にも(昔の)『ドラゴンクエスト』シリーズはイベントが短くフィールドも広くないので、引っかかり無くプレイできた。
『ゼノブレイド2』は良くも悪くも現代JRPGの象徴的な作品である。楽しめなかったのは残念だが、仕方ない。どんなジャンルにも合う合わないがある。自分に合うゲームを探すのも、また一つのゲームなのかもしれない。