2019/03/06

『ドラガリアロスト』は11年遅れの『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』だった?

先日、スマホを買い替えたので、気になっていた『ドラガリアロスト』をインストールした。理由はもちろん任天堂が販売元だからだ。

『ドラガリアロスト』は、宣伝を見る限りでは至って普通のスマホゲーである。しかし、あの任天堂が関わるからには「普通のスマホゲー」ではない何かを見せてくれるはずだ。

……と期待してプレイし始めたのだが、少なくとも軽く遊んだ限りでは良くも悪くも「普通のスマホゲー」でしかなかった。だがそれ以上に私が連想したのは、なぜか全然別のゲーム――『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』だったのだ。

コントローラーでやりたい

『ドラガリアロスト』は、シンプルなマップ見下ろし式のアクションRPGである。

軽くプレイしただけだが、アクションRPGとしての出来は決して悪くないと思う。
敵の攻撃範囲が可視化されているのが分かりやすく、このおかげで攻撃を避けやすい。この手のアクションゲームは敵の攻撃の当たり判定がわかりづらく、「避けたつもりが当たった」となることが多いため、理不尽感が緩和されている。

ただ、操作性が悪い。スマホのスワイプやタッチで移動や攻撃をこなすため、「攻撃したつもりが移動になる(あるいはその逆)」となる事態が頻発する。
このゲームは、本来はコントローラー(ゲームパッド)でプレイするべき作品なのだ。

モバイル向きゲームの操作系は3種類に分けられる。
1つ目は、『Deemo』や『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』のように「タッチパネル操作に向いている」ゲーム。
パズルゲームや音ゲーとの融和性が高く、こういったゲームはボタン操作よりタッチパネル操作の方がスムーズでストレスが少ない。スマホとの相性が良い、幸せなゲームだ。

2つ目は、『ファイアーエムブレム ヒーローズ』や『どうぶつの森 ポケットキャンプ』のように「タッチパネル操作でも問題がない」ゲーム。
タッチ操作がベストというほどマッチしているわけではないが、不向きでもない。普通に操作はできる、といった作品群である。アクション性のないゲーム全般が当てはまるだろうか。

そして3つ目は、この『ドラガリアロスト』のように「タッチパネルだと操作に無理がある」ゲームである。
アクションゲームに多く、ボタン操作を前提とした既存の作品をスマホで無理やり再現しようとすると、どうあがいてもコンソール版の劣化になってしまう。

事実、『ドラガリアロスト』をプレイして思い出したのは、11年前にニンテンドーDSで発売された『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』だった。


タッチパネルで直感的操作!(って本当?)


『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』は、「ゼルダ」として決して悪い作品ではない。謎解きは面白いし、大海原を旅する世界観の雰囲気も良い。

ただ、このソフトは「タッチパネルでしか操作できない」という特殊なシステムにより評価を落としていることでも知られている。

移動したり剣を振ったりブーメランを投げたり……アクションはこれまでの2Dゼルダと同じなのに、ボタン操作が効かず、ほぼすべての操作をタッチパネルでこなす必要があったのだ。

このようにタッチ操作を強要するゲームは、DS初期には珍しくなかった。
まだスマートフォンが普及していない時代、ニンテンドーDSのタッチパネルというインターフェースの先進性をアピールするために、任天堂は無理矢理にでもタッチ操作を使わせようと苦心していた。

『夢幻の砂時計』は、そうした時代の徒花と言えるかもしれない。
『夢幻の砂時計』のゲーム性や謎解きを褒める声はあれど、タッチ操作を肯定する意見はほとんど聞かれないのが評価を物語っているだろう。

やがて時代が進み、DSの後継機・ニンテンドー3DSが出る頃には、こういった「無意味にタッチ操作を強要するゲーム」はめっきり減った(絶滅したわけではない)
 
3DSはそもそも下画面のタッチパネルが上画面より小さく、上画面がメインで下画面は補助的にタッチ操作を使うのみ、というゲームが多くなった。
何のことはない、タッチ操作が合わないゲームに無理にタッチパネルを使う必要はないという、当たり前の結論に達したのである。すでにその頃にはスマートフォンも普及し、タッチパネルは目新しい技術ではなくなっていた。


11年遅れで追いかけるのではなく

しかし『ドラガリアロスト』は、11年前に『夢幻の砂時計』が犯した失敗を再演している

これがCygames単独による「普通のスマホゲー」であれば、特にこう思うことはなかった。しかし、皮肉なことに『ドラガリアロスト』は任天堂のゲームなのである。

任天堂は「タッチパネルで既存のアクションゲームを再現するのは困難である」というDS時代の教訓から、スマホに最適化された操作系を持つ新たなアクションゲーム『スーパーマリオラン』を生み出した。

それだけに『ドラガリアロスト』に操作系の工夫が見られないのが残念である。
スマホゲーはコンソールゲームを無理やり真似るのではな、スマートフォンというデバイスを活かした操作系やゲーム性を追い求めてほしいと思う。
そうしなければ、スマホゲーはいつまでも「11年遅れ」という誹りを免れないだろう。