※この記事の内容は2020年9月24日時点のスタンダード環境(エルドレインの王権~ゼンディカーの夜明け)に基づきます。
MTGアリーナにて「ゼンディカーの夜明け」のリリースとスタンダードのローテーションが行われ約1週間。現時点で環境の頂点に君臨しているのは《創造の座、オムナス》率いる4色上陸ランプデッキである。(参考:デイリーデッキ)
このデッキの核は《創造の座、オムナス》だが、当然、環境最強のパワーカードの1枚《自然の怒りのタイタン、ウーロ》も搭載され大暴れしている真っ最中である。
登場以来常に環境を支配し続けてきたウーロだが、公式の告知によれば来週の頭にスタンダード環境になんらかの「アップデート」があるらしく、ついに年貢の納め時(禁止)かとの声が大きい。
もしかすると今週末が「シャバ」でウーロを見られる最後かもしれない。今回は改めてこのカードがいかに強いのかを振り返ってみたい。
追記:9月28日に無事禁止されました。
基本性能
基本性能は上の画像の通りである。まずウーロを3マナで唱えて戦場に出すと、1枚ドロー&3点回復&土地加速が誘発し、その後すぐに墓地に落ちる。
これだけなら単なるキャントリップ付きの土地加速カードに過ぎないが、ウーロの本領はその後、墓地から「脱出」できる点にある。
ウーロが墓地にいる場合、4マナ(緑緑青青)と墓地のカードを5枚追放することで墓地から唱えることができ、その場合もドロー&回復&土地加速が誘発、さらに今度は6/6という図体で戦場に居残る。そして攻撃するたびにドロー&回復&土地加速が毎回誘発するのである。
ウーロが強い理由1:脱出できる
ウーロにはいろんな効果が付いているが、果たしてどの部分が強いのだろうか?
一言で言えば全部強いのだが、あえて1つに絞るなら脱出が強いというべきだろう。
脱出はマナと墓地リソースさえあれば、手札消費無しで墓地からカードを唱えることができる。これは単純ながら極めて強力なメカニズムである。
脱出が強い理由は2つある。1つはカードアドバンテージに直結するからだ。単純に手札と墓地から2回唱えられるので、脱出するだけでもカード1枚分得となる。
脱出が強いもう一つの理由は「何度でも使える」点だ。一度脱出したカードでも、もう一度墓地に落ちれば(追放コストを払える限り)「再脱出」が可能である。
当たり前だが、普通のカードというのは墓地に落ちればそれで役割は終了で、何もできなくなる。しかし脱出は追放コストがある限り何度でも使えてしまう。手札に来た時点で永久に使えるリソースとなってしまうのだ。
ウーロが強い理由2:キャントリップ付き
このように脱出は潜在的にアド得なメカニズムだが、ウーロの場合はそこにキャントリップ(戦場に出た時1枚ドロー)が付いているため、より強力かつ確実なアドバンテージ源になっている。
キャントリップ=「オマケの1枚ドロー」は一見地味な効果だが、特にクリーチャーに付いている場合は見た目以上に強力である。単体除去を撃たれたり戦闘で相打ちになったとしても、カード枚数的には得をしているからだ。
例えば相手が手札からウーロを唱えた時、こちらが《焦熱の竜火》を当てたり《自然への回帰》を撃ったりしてウーロを追放したとする。一見墓地対策ができているように見えるが、実際には相手はウーロを失った代わりにキャントリップで1枚引いているので差し引きのカード消費は0、対してこちらは対処カードを1枚消費しているのでカード1枚分損していることになる。
打ち消しを撃った場合も似たようなことになる。この場合、相手はドローできないのでウーロと打ち消しの1対1交換に見えるが、ウーロは墓地から唱えられるので、手札から墓地という名の第2の手札に移動しただけである。ゆえにやはり潜在的にカード1枚損していることになる。
脱出してきたウーロに除去を当てた場合はもっと悲惨で、こちらは除去カードを失っているのに、相手は手札が減らないどころかドロー分増えている。これだけで2枚分ものアドバンテージが生まれてしまうのだ。
ウーロが強い理由3:6/6
とはいえ、キャントリップが付いていたり墓地から復活できるクリーチャー自体が珍しいわけではない。だが、そういったアドバンテージが稼ぎやすいクリーチャーはたいていサイズが小さく、1枚で勝てるほどのパワーカードとしては設計されていない。
だがウーロは違う。これだけのアドバンテージ生成能力を持ちながら、自身も6/6というフィニッシャーとして十分なスタッツを持っているのである。
パワー6は数回殴ればゲームを終わらせるだけの脅威となり、タフネス6は生半可なクリーチャーでは相打ちすら取るのが困難な壁となる。
このため戦場に放置しておけば殴り殺されるし、かと言って処理にカードを費やすとアド損になってしまう。速く死ぬかゆっくり死ぬかの二択を迫られるのである。
ウーロが強い理由4:攻撃のたびに効果が誘発する
どんなにサイズが大きなクリーチャーであっても、回避能力が無ければチャンプブロックで時間を稼がれてしまう。しかしウーロの場合は、攻撃のたびにドロー&回復&土地加速が誘発する効果がそうした逃げを許さない。
ウーロがフリーで殴れる状態だと、毎ターンカードとライフのアドバンテージが広がってしまう。速やかにウーロを処理できなければどんどん不利になっていくわけだが、くり返すように処理したところでアド損が確定するため、いずれにしても地獄である。
ウーロが強い理由5:コストが安い
いかに強いカードと言えども唱えられなければ意味がないが、ウーロはそのカードパワーに反し非常に唱えやすい。
冷静に考えて、4マナはキャントリップ付きの6/6としては軽すぎる。脱出するには墓地に落とす必要があるが、手札から3マナで唱えばいいだけなので何の問題もない。
(緑緑青青)という色拘束は一見厳しく見えるが、青緑はマナ加速が得意な色なのでさほどの障害にもならない。
加えて脱出に必要な5枚の墓地も、《耕作》《乱動の再成長》といった土地加速カードや《寓話の小道》《進化する未開地》などのフェッチランドにより、想像以上に素早く達成可能である。
最悪、墓地が溜まらず脱出できなくても別のフィニッシャーを出せばいい。
3マナでドロー・土地加速・ライフゲインができているだけで十分仕事は果たしているのだ。
ウーロが強い理由6:3点回復付き
オマケのように付いている3点のライフゲインも、特にアグロデッキとの対決では大きな存在感を示す。
ランプデッキの最もシンプルな倒し方は、とにかく素早く攻めて相手が強いカードを出す前にライフ20点を削り切ることである。
このゲームプランを取る場合、ウーロの3点回復は非常に大きな壁となる。あとライフ1点まで追い詰めたのに、ウーロで回復されて時間を稼がれ逆転負け……という悲劇は誰しも経験があるだろう。
ウーロが強い理由7:土地加速付き
もはやオマケのように感じてしまうが、土地加速もランプデッキの本分として重要である。
一度伸びた土地は基本的に干渉ができないので、確実に相手より強いアクションが取れるようになる。
ウーロが強いのは、どんな場面でも腐らないことだ。序盤に引けば土地加速カードとなり、終盤に引けば脱出してフィニッシャーとなる。ランプに必要な要素を1枚ですべて兼ねてしまっているのだ。いつ何枚引いても強い。ウーロは単体でマジック・ザ・ギャザリングなのである。
ウーロが強い理由8:伝説性のデメリットが薄い
伝説のクリーチャーは戦場に1枚しか存在できないため、安易に複数枚採用すると手札にダブった際に展開を阻害してしまうリスクがある。
しかしウーロは非脱出で唱える場合は実質使い捨てのソーサリーなので、手札にダブってもほぼリスクがない。ゆえに、何のためらいもなく4枚採用が可能である。
結局:禁止されるのか?→されました
ここまで言葉を費やしてきたように、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》は間違いなく現スタンダードで最強のカードである。
単純なカードパワーだけ見れば《エンバレスの宝剣》や《軍団のまとめ役、ウィノータ》あたりも相当だが、どちらも活かすにはクリーチャーを並べて有利な盤面を準備する必要がある。しかしウーロはライフも手札もない圧倒的劣勢から1枚で逆転を狙えるあたり、格が違うとしか言いようがない。
出されるだけでアドを取られ、数回攻撃されるとフェアデッキでは追いつくのが不可能なほどのアド差が確定する。1枚で試合をひっくり返すパワーがあるにも関わらず、4枚積んでも手札で腐ることが無い。緑青のデッキなら入れない理由がないし、それ以外の色でも無理してでも緑か青をタッチしてまで採用するべきカードである。
これまでも十分禁止級の強さだったが、「ゼンディカーの夜明け」で更に《創造の座、オムナス》と《水蓮のコブラ》という悪友を得たことで、単に土地加速役としても凶悪な役割を果たすようになってしまった。
正直なところ、ウーロだけ禁止にしても現在の4Cオムナスはさほど弱体化しない(マナ加速源であるコブラも潰さない限り暴れ続ける)と思うが、「単純に異常に強い」点に「オムナスコブラと絡むと極悪」な点がダメ押しになって、やはり禁止は避けられない運命な気がする。
さよならウーロ、ずっと死の国に繋がれててね……。