いよいよ2021年7月に「フォーゴトン・レルム探訪」がリリースされ、これで「エルドレインの王権~フォーゴトン・レルム探訪」期のスタンダードのカードがすべて出揃った。
しかしこの時期になると悩ましいのは、レア・神話レアワイルドカード(WC)の使い道だろう。
「今更アドベンチャーは組みたくない!」というあなたに
MTGのスタンダードにはローテーションというシステムがあり、毎年9月に使用可能なカードプールが入れ替わる。
今年の場合は、2021年9月にリリースされる「イニストラード:真夜中の狩り」の登場と同時に、「エルドレインの王権」「テーロス還魂記」「イコリア:巨獣の住処」「基本セット2021」の4エキスパンションのカードが使用不可になる。
すなわち、今から《恋煩いの野獣》や《厚かましい借り手》をWCで貰って出来事デッキを組んでも、9月にはスタン落ちして使えなくなってしまうのだ(ヒストリックでは使えるが)。
特にワイルドカード資産が少ない初心者は、できるだけ長く主力として使えるカードにリソースを割きたいと考えるのが人情だろう。
この記事では、9月のローテーション後も使えるカード(すなわち「ゼンディカーの夜明け」「カルドハイム」「ストリクスヘイヴン:魔法学院」「フォーゴトン・レルム探訪」の4エキスパンション)の中から、レア・神話レアWCの交換先としてオススメのカードと交換は少し待ったほうがいいカードを紹介する。
- もちろん、ローテーション後に登場したカードによって環境が様変わりする可能性もある。
- あくまで現状(2021年7月時点)での評価である点を留意いただきたい。
- この記事ではレア・神話レアカードのみを取り上げる。
- コモン・アンコモンのWCはMTGAをプレイしているとすぐに余るほど入手できるので、気になるカードはどんどん交換していって問題ない。
- 一部のレアカードは新たな配布デッキに封入されていてタダで1枚目が手に入る可能性があるので、1枚も持ってないレアカードの交換は配布デッキ入手後の方が良いだろう。
- (配布デッキに入っているレアカードは、それを1枚も持っていない場合にのみ、タダで入手できる。以下、配布デッキに1枚収録されているカードはカード名の後に★を付ける。)
- 現在、「ゼンディカーの夜明け~フォーゴトン・レルム探訪」のカードのみを使えるイベント「スタンダード2022」が開催されている。
- 「エルドレインの王権~基本セット2021」のカードをあまり持っていない人はそちらで遊ぶのがオススメ。
土地
《不詳の安息地》
「いきなり土地?」と一見地味だが、実際は現環境で最も重要なカードの1枚だ。
氷雪3マナで4/3警戒と化す、極めて優れた土地兼クリーチャー。
アタッカーとしてはもちろん、普段は土地なので打ち消しが効かず、ソーサリータイミングでの除去(《ドゥームスカール》や《古き神々への拘束》など)をかわせるのが大きな利点だ。
すべてのクリーチャー・タイプを持つため《パワー・ワード・キル》も効かず、土地なので《消失の詩句》も効かない。このカードの存在により、「スタンダード2022」環境ではコントロールデッキが半ば生存権を奪われている状態だ。
単色デッキはもちろん、2色デッキでも色事故のリスクを負ってまで採用する価値が十分にある。ローテーション後もアグロデッキの核となる1枚だろう。
「フォーゴトン・レルム探訪」のクリーチャー化する土地
同じくクリーチャー化する土地では、「フォーゴトン・レルム探訪」で登場したサイクルが有用だ。
5枚のうち最も使いやすいのは《バグベアの居住地》だろう。自身とトークンの合計パワー4は《不詳の安息地》と遜色なく、1/1トークンが戦場に残るので次のターンからは《不詳の安息地》を超えるクロックとなる。
《目玉の暴君の住処》は4マナでパワー3と《バグベアの居住地》より少し弱いが、威迫によりブロックされづらいのが利点。タフネス3で倒されづらく、墓地追放効果もある。地味ながら安定した性能だ。
《ハイドラの巣》 はマナレシオこそ低めだが、サイズを調節できるのが便利。終盤に余ったマナをつぎ込むというマナフラッド受けとしての性能はもっとも高い。
《ストーム・ジャイアントの聖堂》は、起動こそ6マナと重たいが、クリーチャーのサイズが7/7と最高峰。護法3によりブロックされづらく、長期戦でとても強い。コントロール系デッキのフィニッシャーと使える。
《フロスト・ドラゴンの洞窟》は起動5マナでパワー3とマナレシオが低いが、飛行持ちが売り。ただし軽いクリーチャーが多いデッキでは6マナ払えないことが多いので要注意。
いずれも有用だが、迷ったら入れるデッキを選ばない赤・緑・黒の土地を選ぶのがオススメだ。
モードを持つ両面土地★
表か裏かを選んで出せる土地。基本土地のほぼ上位互換であり、基本的に多色デッキなら4枚入れ得である。
ただしどんな色でも使える《不詳の安息地》と違って、当然ながらデッキの色に合っていなければ使えない。
個人的には、使いたい多色デッキがある場合は、まずデッキの軸となる強力なクリーチャーやスペルを優先的にWCで貰うのがオススメだ。
しばらく試しに使ってみて、手応えを感じる、もっと使い込みたいと思ったら、マナベースを安定させるために両面土地を増やして行けばいい。
両面土地は色事故を緩和してくれるが、無ければデッキが組めないわけではない。コモンやアンコモンの2色土地でもある程度代用が効く。
初心者なら、WCは代用困難な強力カードに使うのがオススメだ。
「チラ見せランド」はまだ様子見推奨
「ストリクスヘイヴン」で登場したレアの2色土地は「チラ見せランド」と俗称される。プレイする際に手札の基本土地を「チラ見せ」することでアンタップインできるからだ。
現カードプールでは貴重なアンタップイン可能な2色土地だが、現状ではこれらにWCを切るのはあまりオススメしない。
理由は単純で、ローテーション後に新たな多色土地が登場する可能性があるからである。
ここ数年のスタンダードでは、1年毎に1~3種類の有用な多色土地が登場している。次のイニストラードでこのチラ見せランドの友好色版が出る可能性は高いが、それ以外にももっと良い多色土地が出た場合、チラ見せランドの出番は無くなってしまうかもしれない。
そもそも前述の通り現環境では《不詳の安息地》が非常に強いため、氷雪でない多色土地にレアWCを割く事自体がリスクとも言える。WCを節約したい場合は、慎重に考えたほうが良いだろう。
白
《光輝王の野心家》★
現スタンダードで最強の2マナクリーチャーだ。
出したターンから味方を強化し、立っているだけで際限なく巨大化していく。
相手からすれば除去必須の対象であり、これだけで強い。
ローテーション後も、白のクリーチャーメインのデッキであれば高確率で採用されるだろう。
《スカイクレイブの亡霊》
同じく環境で最も優れた汎用除去だ。
クリーチャーはもちろん「フォーゴトン・レルム探訪」で登場したクラスエンチャント等の置物も処理できるため、需要はより高まっている。
白が濃いデッキであればメイン・サイド合わせて4枚採用されることも多い。スタンダードだけでなくヒストリックでも活躍できる。白いデッキを使うならWCで4枚作ってまず損はしない。
《精鋭呪文縛り》★
ローテーション後の環境を定義するであろう《黄金架のドラゴン》に対する解答の1つだ。7マナになったドラゴンが出てくる前に殴り倒してしまおう。
他にも、よほど軽いカードで固めたデッキ以外なら効果的に働いてくれるだろう。上2枚に比べると少しテクニカルなカードではあるが、やはり白を使うなら作っておいて損は無いはずだ。
その他の候補
その他も白には優秀なレア・神話レアが多い。
《傑士の神、レーデイン》は貴重な氷雪アンチカードであり、《不詳の安息地》を始めとした氷雪デッキが環境に存在する限り価値があるカードだろう。
《パラディン・クラス》は、自分ターンに相手の呪文のコストを増やす効果が強力。イゼット・ドラゴンなどのカウンターを重視したデッキに特に有効だ。ここにオマケとして《栄光の頌歌》効果他が付いてくるのだから贅沢だ。
《ガーディアン・オブ・フェイス》は全体除去から自軍クリーチャーを守ることができる。単純に3マナ瞬速クリーチャーとしても使えるので、メインから入れても腐りづらいのも利点だ。
しかし上の3枚は、あくまで特定のカード・デッキに対するメタカードという趣が強い。すなわち、メタゲーム次第で強くも弱くもなる。
WCが乏しいうちは、迷ったらどんなデッキでも使いやすい汎用性の高いカードを優先するのが無難だ。
青
《アールンドの天啓》
飛行トークンと追加ターンを得る、シンプルながら強力なパワーカード。
《黄金架のドラゴン》を並べてこれを連打すれば、一瞬で勝負が決してしまうことも少なくない。
追加ターンを得られるカードはスタンダードでは現状これだけであり、替えが効かない独自性を考えるとWCを4枚使う価値は高い。
その他の候補
青は色の特性上、派手なパワーカードが少ない傾向にあるため、WCで引き換える候補が少ない。
逆に言えばコモン・アンコモンの打ち消しやバウンスも十分に一線級で使えるということであり、資産が少ないプレイヤーにとっては優しい色と言えるかもしれない。
あえて候補を挙げれば、《砂漠滅ぼし、イムリス》★。
護法による除去耐性と、攻撃が通ればドローできるアドバンテージ獲得能力により、コントロール・ミッドレンジ系デッキのフィニッシャーになりうるスペックを持つ。
ただし伝説であることも含め、いつどんな相手にも強いという類のカードではない。WCを割く量は冷静に考えよう。
黒
《影の評決》や《悪意の熟達》……は今引き換えない方が良い
「フォーゴトン・レルム探訪」では《偽りのパラディン》、《ワイト》、《ドラコリッチ・エボンデス》、《西門の主》★、《ゼラチナス・キューブ》★といった優秀な黒のクリーチャーが多数登場した。
ローテーション後の新環境で黒単アグロが存在感を示す可能性は十分ある。
ただ《光輝王の野心家》や《スカイクレイブの亡霊》らと比べると、黒単以外のデッキで使う場合の汎用性にやや劣るのがネックか。強いて言えば《ドラコリッチ、エボンデス》がこの中では最も汎用性が高い。
問題は、クリーチャー以外の除去である。
例えば《影の評決》は3マナ以下のクリーチャーをすべて追放することができる。小型クリーチャーメインのアグロデッキには非常に有効な全体除去であり、事実、現スタンダード環境に大きな影響力を与えている強力カードだ。
しかし、今《影の評決》を(特に「スタンダード2022」環境で使うために)WCで交換するのはオススメしない。理由は「チラ見せランド」の時と同じで、ローテーション後に別の全体除去が登場する可能性があるからだ。
《影の評決》は4マナ以上のクリーチャーには無力であり、「スタンダード2022」で猛威を振るう《黄金架のドラゴン》には何の役にも立たない。
同じくレア全体除去の《激しい恐怖》も同様で、環境にタフネス3以下のクリーチャーが多ければ強いが、少なければ弱い。
《悪意の熟達》★も似ている。こちらは2マナでどんなクリーチャーも追放できる汎用性がウリで、《不詳の安息地》と《星界の大蛇、コーマ》に両方対応している数少ない除去だ。
そのためこちらは「スタンダード2022」環境でかなり有用なカードであり、今「スタンダード2022」で勝ちたいならWCを切る価値はある(その意味で《影の評決》とは対の立ち位置だ。)
しかし、ローテーション後にどうなるかはわからない。
例えば「イニストラード:真夜中の狩り」で《不詳の安息地》《黄金架のドラゴン》《星界の大蛇、コーマ》を処理できる除去が(もしかしたらアンコモンで)登場する可能性もある。
そうなれば、わざわざレアWCを使って《悪意の熟達》を貰う意義は薄れてしまうだろう。
黒の除去は相互互換が多く、環境によって有効な除去は移り変わる。貴重なWCを切るのは、ローテーション後の環境を見てからでも決して遅くない。
(追記:予想通り「イニストラード:真夜中の狩り」にて《冥府の掌握》という2マナ万能除去が登場した。レアWCが乏しい初心者は、とりあえず《冥府の掌握》を除去枠として使い、どうしても追放除去を当てたいクリーチャーが多いと感じたら、その時初めて《悪意の熟達》にWCを切るのをオススメする。)
赤
《黄金架のドラゴン》★
ここまでで何度も名前が出てきたように、現環境を定義する最重要クリーチャーである。恐らくローテーション後もそうなるだろう。
4/4飛行&速攻の強烈なクロックと、マナ加速からのテンポ回復、伝説でないので複数枚並ぶほど強い。赤いデッキならアグロ・ミッドレンジ・コントロール問わず入るポテンシャルがある。迷わず神話レアWCを4枚支払うべきパワーカードだ。
その他の候補
「フォーゴトン・レルム探訪」でも宝物シナジーやドラゴンが多数登場したため、新環境でもキーカードとなる可能性はある。
ただし、活かすには基本的に専用デッキを組む必要があるため、WCを割く際は注意が必要だ。
ただし伝説かつ6マナと重たい。配布デッキで1枚貰えるため、何枚WCを使うかは考慮するべきだろう。
緑
《レンジャー・クラス》★
「フォーゴトン・レルム探訪」で登場したクラスエンチャントの中では、《パラディン・クラス》と並んで最もカードパワーが高い1枚だ。
まず戦場に出すだけで、2マナ2/2のクリーチャーを用意できる。このため《ポータブル・ホール》や《古き神々への拘束》で除去されてもカード枚数では得。
レベル2になれば、アタックするたびにクリーチャーを強化できる。これだけでクリーチャーデッキ相手にはコンバットで大きく有利になる。
さらにレベル3で《怪物の代言者、ビビアン》と同等の効果。コントロールデッキ相手のカード・アドバンテージ源として非常に有効だ。
序盤に2マナでエンチャントを置くだけで、中盤~終盤の継続的なアドバンテージが約束される強力無比な1枚。緑のクリーチャーメインのデッキなら、高確率で主力として採用されるだろう。
《カザンドゥのマンモス》★
裏面で出すとタップインの土地になるクリーチャー。
シンプルな性能ながら確実に土地事故を軽減してくれる、縁の下の力持ち。緑のクリーチャーデッキならとりあえず4枚入れて間違いない。
その他の候補
他にも緑には優秀なクリーチャーが多い。
《群れ率いの人狼》★は、2マナ3/3という優れたマナレシオに攻撃誘発のドロー付き。しかし緑緑のダブルシンボルなので、緑単色デッキであっても《不詳の安息地》と噛み合わないのがネック。《老樹林のトロール》も同様。
《エシカの戦車》も強力なカードで、トークンシナジーが無くても十分デッキに入るが、アーティファクト破壊が環境にどれぐらいあるかによって強さが変わってくる。
黒の除去と同じく緑のクリーチャーも層が厚いので、WCが足りないときは代替カードで補完するという選択もアリだ。
多色
《スカルドの決戦》★
ローテーション後の非クリーチャー呪文では最大級のカードパワーを誇る1枚。
着地した時点で膨大なハンド・アドバンテージを稼ぎつつ、+1/+1カウンターで盤面も強化する動きは強力の一言。中長期戦で比類なき強さを発揮する。
現スタンダードでは《出現の根本原理》の更なるカードパワーの前に押しつぶされ気味だが、ローテーション後は環境を定義するカードに返り咲くだろう。
その他の候補
《星界の大蛇、コーマ》は単体のスペックでは最強のクリーチャーだ。打ち消されず、除去耐性があり、盤面妨害能力もある。
特に「スタンダード2022」環境では対処カードがかなり限られており、前述の《悪意の熟達》や《魂の粉砕》、《ゼロ除算》などのバウンスぐらいしか無い。
とは重たいので、1~2枚用意できれば十分だろう。
《プリズマリの命令》★は、バーン・アーティファクト破壊・マナ加速・ルーティングと器用な役割をこなせるいぶし銀のカード。
しかし現環境で重視されているのはアーティファクト破壊の効果。《グレートヘンジ》や《エンバレスの宝剣》といった強力なアーティファクトがローテーションで消えた後にどのような評価となるか。
《消失の詩句》★も優れた除去だが、やはりメタゲームによって強さが変動する点、そもそも白黒デッキでなければ使えない点が汎用性に欠けるか。
まとめ
WCが足りないと、組みたいデッキが思い通りに作れず歯がゆいことも多いだろう。
しかしこちらの公式コラムでも語られているように、限られた資産でどうデッキを組むか試行錯誤するのもカードゲームの楽しみだ。
上でも述べたように、両面土地が無くても2色デッキはなんとか作れる。《悪意の熟達》が無くても、アンコモンの《パワー・ワード・キル》や《落第》で除去は代用できる。
しかし《黄金架のドラゴン》や《アールンドの天啓》の代用品は無い。であれば、まず重要なカードをWCで交換し、脇役は徐々に揃えていく方が良いだろう。
WCをどれにいつ使うか。こうした「アドバンテージ」や「ケア」の概念に頭をひねるものまた、盤外で行われるもう一つの「カードゲーム」なのだ。