ヒストリックパウパーはMTGアリーナ上の「ミッドウィークマジック」にて期間限定・定期的に開催されているイベントで、MTGアリーナに実装されているカードのうち、レアリティがコモンのカードだけを使えるフォーマットである。
コモンのカードは地味な効果が多いため、その分細かいアドバンテージのやり取りやコンバットの判断が勝敗を分けることが多いのがこのフォーマットの魅力だ。
この記事では、そんなヒストリックパウパー環境における主なデッキをいくつか紹介する。イベントの参考になれば幸いだ。
※この記事の内容は、2024年1月時点(「イクサラン:失われし洞窟」「タルキール覇王譚(アリーナ版)」まで)の環境に基づきます。
白単ウィニー(キャントリップ型)
デッキ
4 A-不動のユニコーン (HBG) 104
4 スレイベンの検査官 (SOI) 44
4 月皇の古参兵 (MID) 27
4 コーの空漁師 (J21) 16
4 ラフィーンの密通者 (SNC) 26
4 鼓舞する監視者 (SNC) 18
4 顔なしの工作員 (J21) 1
4 捜索隊の隊長 (MID) 32
4 貴族の不面目 (HBG) 25
4 君は見張り中に物音を聞いた (AFR) 42
2 北方の大鷲 (LTR) 7
18 平地 (HBG) 291
まずは白のクリーチャーを横並びにするアグロ系のデッキから。
白のウィニーというと軽量なクリーチャーを横並べにするのが定番だが、ヒストリックパウパーには残念ながら優秀な1マナクリーチャーが乏しい。
そのため、代わりに《スレイベンの検査官》や《鼓舞する監視者》など、戦場に出たときにカードを1枚引けるキャントリップと呼ばれる(もしくはそれに類する)効果を持ったクリーチャーを詰め込み、除去されても粘り強く戦える構成になっている。
一見地味に見えるが、単なる1ドローと侮るなかれ。除去されたり相打ちしてもアド得なので、攻める際も守る際も、じりじりとカード差を付けていくことができる。
全体的なカードパワーが低いヒストリックパウパーにおいては、1ドロー付きのクリーチャーはそれだけで十分優秀なのである。
クリーチャーを並べたら《不動のユニコーン》の起動効果(アリーナ再調整版は起動に5マナ必要)で全体強化して勝負を決めよう。
MTGアリーナ専用カード《貴族の不面目》は1マナインスタントの優秀な除去。クリーチャーが並ぶこのデッキなら火力も高くなりやすい。
赤単バーン
デッキ3 ヴィーアシーノの紅蓮術師 (M19) 1664 熱錬金術師 (MID) 1644 物騒なカタパルト (WOE) 1564 ショック (M20) 1603 火柱 (JMP) 3554 祭典壊し (VOW) 1554 稲妻の一撃 (DMU) 1374 乱動の噴火 (ZNR) 1554 批判家刺殺 (RNA) 1154 無謀なる衝動 (VOW) 1744 レンの決意 (MOM) 17314 山 (AFR) 2754 自律焼炉 (ONE) 247
続いてはどんなフォーマットでも定番の赤単。いくつかのバリエーションが存在するが、まずは直接火力に寄せたバーンタイプ。
《ショック》や《稲妻の一撃》をひたすら相手の顔面に撃ち込み、20点のライフを速攻で削り切るデッキだ。《熱錬金術師》《物騒なカタパルト》は、呪文を唱える度にダメージを飛ばせるので追加のダメージソースになりつつ、相手の攻撃を防ぐブロッカーとしても役立ってくれる。
《無謀なる衝動》と《レンの決意》を上手く使えば、手札を切らさず粘り強く戦うことも可能。
プレイングのコツとしては、基本的に火力はすべて相手のライフめがけて撃ち込むこと。クリーチャーに撃つのは、絆魂持ちなどどうしても放置できない相手のみにしよう。
赤単ブリッツ(悪鬼シュート)
デッキ
4 ギトゥの増幅士 (DMU) 127
4 祭り壊し (MID) 140
4 窯の悪鬼 (ROE) 153
4 祖先の怒り (VOW) 142
4 大将軍の憤怒 (DAR) 151
4 突破 (M21) 140
4 ティムールの激闘 (FRF) 116
4 ショック (M20) 160
2 霜噛み (KHM) 138
4 無謀なる衝動 (VOW) 174
2 レンの決意 (MOM) 173
18 山 (NEO) 290
2 自律焼炉 (ONE) 247
一方こちらは《窯の悪鬼》を強化して一気に勝負を決めるコンボ色が強いデッキ。
《窯の悪鬼》はインスタントかソーサリーを唱えるごとにパワーが大きく上昇するため、これを利用して大ダメージを叩き込むのが目的だ。
キーカードは《ティムールの激闘》。パワー4以上のクリーチャーに二段攻撃とトランプルを付与するコモン版《エンバレスの宝剣》であり、ヒストリックパウパーのカードプールの中では頭一つ抜けたカードパワーを誇っている。
《窯の悪鬼》がいる状態で《ティムールの激闘》を含め3回呪文を唱えるだけで、パワー10の二段攻撃でゲームを決めることができる。ブロックされても一方的にクリーチャーを潰しつつダメージを通せるので、ライフ・ボードの両面に大打撃を与えることが可能だ。
《祖先の怒り》と《突破》はトランプルを付与しつつ、手札を減らさずに呪文カウントを稼ぐことができるので相性抜群だ。
緑単ストンピィ
デッキ
4 ラノワールのエルフ (M19) 314
4 エルフの神秘家 (M14) 169
3 ラノワールの幻想家 (M21) 193
4 氷皮のトロール (KHM) 176
4 宝石泥棒 (SNC) 151
4 戦旗皮のクルショク (MH2) 149
4 サルーフの群友 (KHM) 192
4 吠え象の群れ (MH1) 187
4 気前のよいエント (LTR) 169
3 強行突破 (IKO) 170
4 エルフの遠見 (LTR) 161
18 冠雪の森 (SLD) 1477
パワフルな緑のクリーチャーを暴れさせたいなら、この緑単がおすすめ。
1ターン目《ラノワールのエルフ》or《エルフの神秘家》、1ターン目《ラノワールの幻想家》or《宝石泥棒》とマナ加速していき、強力なクリーチャーでガツガツ殴っていく緑らしい豪快なデッキである。
トランプル持ちが多いため小型クリーチャーのブロックを気にする必要がなく、キャントリップ付きの《サルーフの群友》や、反復で2体のクリーチャーを展開できる《吠え象の群れ》などアドバンテージ獲得力もあり、全体的なカードパワーが高いのが魅力。
一方、除去が格闘のみであり小回りが効きにくい点や、大きなクリーチャーを打ち消されるとテンポを失ってしまうといった弱点も存在する。良くも悪くも緑らしいパワフルなデッキだ。
青単忍者
デッキ
4 フェアリーの予見者 (MH1) 51
4 フェアリーの悪党 (M20) 58
1 ネットワークの攪乱者 (NEO) 71
1 這い寄る刃 (AKR) 79
4 雲族の予見者
4 A-月回路のハッカー (NEO) 67
4 深き刻の忍者 (J21) 39
4 月刃の忍び (MH1) 59
4 秘儀での飛行 (DAR) 43
4 本質の散乱 (DMU) 49
4 怪物縛り (KHM) 48
4 下支え (DMU) 64
18 島 (NEO) 285
逆に、小粒でトリッキーなクリーチャーで戦いたいならこの忍術デッキ。
飛行持ちの小型クリーチャーを並べて殴りつつ、《月回路のハッカー》《深き刻の忍者》《月刃の忍び》の忍術でハンドアドバンテージを稼ぐ動きを狙う。
アドバンテージ獲得方法が限られているヒストリックパウパーにおいては、ダメージを与えつつドローできる忍術はかなり強力。特に《月回路のハッカー》はアリーナ用再調整によりドロー前に占術2を行えるようになったため、さらにカードパワーが上がっている。
線の細さは否めないものの、他のデッキとはまた違った新鮮な戦い方ができるのが最大の魅力。
上記のリストは序盤から攻めて倒し切る戦術を前提にした青単型だが、他にも赤や黒の除去を入れた長期戦重視タイプも存在するので、バリエーションを考えてみるのも良いだろう。
ラクドス・サクリファイス
デッキ
4 ゴブリンの爆風走り (BRO) 137
4 ギックスの潜入者 (BRO) 98
4 よろめく怪異 (AFR) 119
4 血の泉 (VOW) 95
4 命取りの論争 (AFR) 94
2 勢団の取り引き (NEO) 120
4 実験統合機 (NEO) 138
2 魔法使の打ち上げ花火 (LTR) 252
4 胆液の水源 (BRR) 21
4 電圧のうねり (NEO) 171
4 がぶりんご飴 (WOE) 83
9 沼 (M21) 268
4 山 (M21) 271
1 鉱滓造の橋 (MH2) 246
4 路面列車駅 (SNC) 258
同じくハンドアドバンテージを重視したデッキとしては、この生け贄シナジーを使ったラクドス・サクリファイスがおすすめ。
《命取りの論争》はヒストリックパウパー屈指の優秀なドローカード。《よろめく怪異》や《実験統合機》、《胆液の水源》など生け贄に捧げても損しない、むしろさらにアドバンテージを得られるカードと組み合わせることで大量のアドバンテージを得ることができる。
手札を補充しつつ、生け贄に捧げることで強化されるクリーチャーである《ゴブリンの爆風走り》《ギックスの潜入者》で殴っていく。上記の白単と比べると、よりパワフルにゲームを決めに行くことができる爆発力が魅力と言える。
《実験統合機》と《胆液の水源》は優秀なアドバンテージ源であり、例えば白を入れて《コーの空漁師》と組み合わせたボロス・シンセサイザーは本家パウパーでも有力なアーキタイプとなっている。
ディミーア・コントロール(テラー型)
デッキ
4 ファラジの考古学者 (BRO) 48
4 カザド=ドゥームのトロール (LTR) 111
4 トレイリアの恐怖 (DMU) 72
2 異世界の凝視 (MID) 67
4 考慮 (MID) 44
4 ロリアンの発見 (LTR) 60
4 宝船の巡航 (KTK) 59
4 ダブリエルの萎縮 (J21) 16
3 苦痛ある選定 (ONE) 81
4 税血の刃 (LCI) 128
1 息詰まる噴煙 (IKO) 100
1 予想外の牙 (IKO) 102
3 酸欠 (LCI) 69
7 島 (KTK) 252
7 沼 (KTK) 255
2 陰鬱な僻地 (M20) 245
1 汚染された帯水層 (DMU) 245
1 トカシアの採掘場 (BRO) 266
ヒストリックパウパーでは一般的なコントロールデッキが組みづらい。全体除去が弱く、盤面をコントロールした後に1枚で勝ちまで持っていけるフィニッシャーが少ないからだ。
しかし近年は強力なコモンカードが多く実装されており、ヘビーなコントロールデッキも成立するようになってきた。ここで挙げた青黒コントロールがその一例である。
フィニッシャーとなるのは、本家パウパーでも大活躍している《トレイリアの恐怖》(テラー)。除去で盤面を捌き、ドローしつつ5/5護法2を戦場に繰り出す。
「指輪物語」にて登場した《カザド=ドゥームのトロール》も重要な存在。序盤は沼サイクリングで土地に変え、後半は6マナでそのまま出して勝負を決めに行く。
どうしても序盤にライフを詰められがちなデッキなので、これらのフィニッシャーに絆魂を付けてライフレースを逆転できる《予想外の牙》も採用している。
リソースを確保するドローカードには、同じく島サイクリングを持つ《ロリアンの発見》と、本家パウパーでは禁止となっている《宝船の巡航》という強力な布陣。
一方、黒の除去はややクセがあるものが多いため、赤の火力を採用するのもいいだろう。
バント呪禁オーラ
デッキ
4 サイバの暗号術師 (MOM) 76
4 ジャングル生まれの開拓者 (RIX) 137
4 毒茸の称賛者 (WOE) 192
4 天上の鎧 (RTR) 9
4 歩哨の目 (THB) 36
4 警備の抜け道 (SNC) 59
4 祖先の仮面 (MMQ) 229
4 従者の献身 (RIX) 25
4 精霊との融和 (NEO) 180
4 枷はずれな成長 (KLR) 184
6 平地 (SNC) 263
3 島 (SNC) 265
3 森 (SNC) 270
4 斡旋屋一家の潜伏先 (SNC) 248
4 クアンドリクスの学舎 (STX) 271
最後は、呪禁持ちの《ジャングル生まれの開拓者》《翡翠の守護者》をオーラでどんどん強化していく、いわゆる呪禁オーラデッキ。
ヒストリックパウパー環境では呪禁持ちを処理する方法がかなり限られているため、《天上の鎧》や《祖先の仮面》でサイズを大きくして《従者の献身》で絆魂を付ければダメージレースで負けることがほぼ無くなり、実質勝利が確定する。
ハマればどんな相手も封殺できる強力なコンボデッキだが、3色デッキというマナベースの不安定さ以外にも、一方で以下に挙げるような対策方法が存在する。
- 速攻で勝つ
- 3~4マナで呪禁クリーチャーを出し、そこにオーラを張ってようやく動き出せるデッキなので、その前に殴り勝ってしまう。アグロデッキの基本的な勝ち方。
- チャンプブロックで時間を稼ぐ
- トランプルなどの回避能力がなければ、小型クリーチャーでブロックすることで時間を稼げる。その間にこちらは飛行やバーンダメージで削り切る。
- 複数クリーチャーのブロックで倒す
- 10/10ぐらいまで強化されても、こちらにクリーチャーが並んでいれば複数ブロックで力を合わせて倒すことも可能。
- 接死で倒す
- どんなに大きい相手も除去可能。ただし先制攻撃に弱い。
- 打ち消す
- シンプルかつ確実性が高い対策。ただし《サイバの暗号術師》は瞬速持ちなので隙を突かれないようにしたい。
- 生け贄に捧げさせる
- 全体除去で倒す
- 前述の通り《祭典壊し》《息詰まる噴煙》を使う。
- エンチャントを狙う
- クリーチャーには触れなくともエンチャントなら剥がせる。インスタントタイミングでコンバット・トリックとして使えれば戦闘破壊も狙える。
このリストは白青緑の3色だが、安定性を重視して白緑の2色にまとめたものも多い。今後の強化にも注目のアーキタイプだ。
おわりに
ヒストリックパウパーには様々なアーキタイプが存在し、シンプルながら奥が深い。何よりコモンのワイルドカードさえあれば簡単にデッキが組める。
MTGアリーナではたまにしかイベントが開かれないものの、現在ははでらCSというコミュニティーでヒストリックパウパーと職工の大会を開催されているため、興味がある人はぜひDiscordサーバーを覗いてもらいたい。