L極とR極
『Super Magbot』は磁力を操って進んでいく2Dアクションゲームです。グラフィックの雰囲気は『Celeste』に少し似ていますね。
しかし『Celeste』など普通の2Dアクションとは違って、『Super Magbot』はジャンプができません。代わりにRで赤の、Lで青の磁力を帯びたビームを放つことができます。ステージのあちこちには赤か青のマグネットバーが存在します。
例えば床にある赤のバーにRで赤のビームを放てば、同極なので反発します。これがジャンプの代わりになるわけです。逆に赤のバーにLで青のビームを撃てば、バーに主人公が引きつけられます。磁石のS極とN極のような動きですね。
この「反発」と「引きつけ」を利用して足場を渡り、ゴールを目指すのが『Super Magbot』です。
操作は、主人公の移動とLRの磁力ビーム、そして右スティックによるビームの角度の調整のみ。とてもシンプルなルールですね。
シンプルなのに難しい
しかし、プレイしてみるとすぐに難しさに気が付きます。RとL、どちらのビームを放てば思い通りに動けるのか、はじめのうちはまったくわからないのです。
「えーっと、赤のバーのところまで行きたいから、違う極のビームを撃たなければならないな。青のビームはLだから、角度を合わせながら左のボタンを押して……」と、いちいち順序立てて操作を確認する必要があるのです。単にジャンプするだけでこれだけ苦労するアクションゲームも珍しいでしょう。
しかし、人間は何事も慣れるもの。しばらくプレイしてくると、左右どちらの極を使えばいいのかスムーズに判断できるようになってきます。この上達の感覚こそがアクションゲームの醍醐味ですね。
(↑慣れてくるとこんな感じにテンポよく動けるようになってきます。)
右スティックの照準が繊細なこともあり(2Dアクションですが、かなりの「エイム力」を要求されます)全体的な難易度は高めですが、何度もやり直しながら少しずつ前に進んでいく攻略の楽しさを味わえました。
もどかしさが面白さにつながることもある(けれど)
しかし……本音を言うと、このゲームをプレイしている間、ある一つの疑問が頭の中にずっと浮かんでいました。それは、「もっと操作をシンプルにすることができるのでは?」という素朴な疑問です。
このゲームは、RとLの二極を場面ごとに撃ちわけて進んでいきます。つまり「赤のバーに赤のビーム」「赤のバーに青のビーム」「青のバーに赤のビーム」「青のバーに青のビーム」という4つの選択肢から適時正しいものを選ぶ必要があるのです。
これは、正直人間の脳には負担が重すぎると感じます。上では「慣れてくるとビームの判断が早くなってくる」と言いましたが、あくまで「最初に比べて」の話。
私も一応表面のラスボスは倒しましたが、結局最後まで「バーを見ただけで反射的に最適なビームが撃てる」領域までは到達できませんでした。
(難しい場面ではあらかじめ正しい操作の順番をメモしておき、「右! 左! 右!」という風に声を出しながらプレイしていました……。)
もっと単純に、バーの色の概念を無くして「バーと反発する」ボタンと「バーに引き寄せられる」ボタンの2つにすれば、操作はずっと直感的になるでしょう。
もちろん、『Super Magbot』もそんなことは百も承知で、その上であえて磁力を使いわけるという複雑な操作を採用しているのです。
おそらくこのゲームは、操作をシンプルにすると簡単になりすぎるのでしょう。『Super Magbot』の難しさのほとんどは操作との戦いです。とっさにバーが出てきて、左右どちらのビームを撃てばいいのかわからず脳が混乱する、その瞬間こそが最も『Super Magbot』らしい体験と言えるかもしれません。
これは『Getting Over the It』や『Jump King』と似ているかもしれません。どちらも操作性にクセがある高難易度ゲームとして知られています(私はどちらも少し触っただけでクリアを諦めました……)。
個人的には、「操作が難しくて難易度が高いゲーム」よりも(『Celeste』や『Trials』のような)「操作はシンプルだけど難易度が高いゲーム」の方が好きです。操作性を落として難易度を上げるのも、一つの方法ですが、いささか「邪道」のように感じてしまいます。
『Super Magbot』も、どちらかと言えば「操作性の制限で難易度を上げているゲーム」かもしれません。ただ、「磁力」というモチーフが一貫しているおかげで理不尽さは薄れており、そのおかげでクリアまで遊ぶことができました。
ともあれ、2Dプラットフォーマーとしての質は十分高く、BGMも素晴らしいです。アクションゲームの操作性について少し考えさせられた作品でした。