2022/08/26

【MTGA/エクスプローラー】ミシック11連勝の青単スピリットを解説 ~《鎖霊》より《幽体の敵対者》~

今月はMTGAでエクスプローラーをプレイしていた。

色々なデッキを使ったが、一番調子が良かったのは青単スピリットで、なんとミシック帯BO3で11連勝、最高順位258位という自分としてはかなりの好成績を収めることができた。その自慢も兼ねてデッキリストを簡単に紹介したい。

※以下の内容は2022年8月時点のエクスプローラー(エクスプローラー・アンソロジー1まで)に基づきます。

デッキリスト

デッキ
4 霊廟の放浪者 (EMN) 69
4 幽体の船乗り (M20) 76
4 鎖鳴らし (JMP) 166
4 至高の幻影 (M19) 76
4 幽体の敵対者 (MID) 77
4 厚かましい借り手 (ELD) 39
4 執着的探訪 (RIX) 35
4 呪文貫き (XLN) 81
4 霊灯の罠 (VOW) 60
2 高尚な否定 (M21) 56
17 冠雪の島 (KHM) 278
1 天上都市、大田原 (NEO) 271
4 不詳の安息地 (KHM) 255

サイドボード
2 隆盛するスピリット (KHM) 43
3 証人保護 (SNC) 66
2 高尚な否定 (M21) 56
3 神秘の論争 (ELD) 58
3 霊気の疾風 (M20) 42
2 未認可霊柩車 (SNC) 246


青単スピリットとは?

青単スピリットは、序盤に軽い飛行クリーチャーを展開し、相手の脅威を豊富な打ち消しで妨害、早いターンに殴りきって勝つことを目指す典型的なクロック・パーミッションである。

構造上、重たいカードを打ち消しで処理しやすいミッドレンジ~ランプやコンボデッキに対して相性がいい。反面、打ち消しが効きづらい軽いカードを連打するアグロデッキは苦手。有利不利がはっきりしたデッキであり、メタゲームの把握が重要になる。

2022年8月時点でのエクスプローラーは、ラクドス・ミッドレンジが人気。
軽量除去が多いデッキであり、こちらのクリーチャーを捌かれ続けると不利なものの、相手も飛行をブロックする手段が少ないので、互角(やや不利?)ぐらいの印象である。

一方でパルヘリオン系のデッキは打ち消しがヒットするので有利であり、苦手な赤単やボロス・ヒロイックが少なかった。天敵である《空殴り》もまだ未実装であり、比較的戦いやすい環境だったのが好成績の一因だろう。


青単スピリットの戦い方

基本的にはマナを構えつつ、相手の動きに合わせて終了ステップに動きたい。マナの使い道の優先度は「クリーチャーの展開>除去の除去の打ち消し>相手のクリーチャーの打ち消し」である。

とにかく重要なのはクリーチャー=クロックを常に盤面に維持することだ。
このデッキは「打ち消しがたくさん入ったアグロデッキ」であり、1ターンでも早く勝負を決めるのが至上命題となる。重たいカードは入っていないので、ゲームが長引けば長引くほど不利になるというのが大前提だ。

そのため、基本的にクリーチャーは毎ターンフルアタック。ブロックに回れば相打ちを取れる……などと考える必要はない。「相打ち=試合が長引く=不利」である。

個々のクリーチャーのパワーは低いので、とにかく盤面にクリーチャーがいなければ話にならない。
常にクリーチャーを展開することができれば、もし片方が除去されてももう片方が残る。そうすれば《執着的探訪》や《至高の幻影》で打点を上げられる可能性が生まれる。

除去を打ち消すのも重要だ。
前述のようにクリーチャーの線が細いデッキなので、基本的に除去はすべて打ち消す方針で問題ない。もちろん後半になって、1体除去されてもキルターンが変わらないようなシチュエーションなら、対処札は飛行・到達持ちを弾くために温存しておくべきだろう。しかしまだゲーム展開が定かでない序盤なら、すべての除去はマストカウンターだと考えて良い。

クリーチャーの打ち消しはもっとも優先度が低い。
守りより攻めが重要なデッキであり、着地してもバウンス等で対処できる。しかし、完全に無視してしまうとライフレースで負けることが多いし、マナを立てていたのに動かないのはテンポ的にも損になる。どこまでの脅威であれば通して良いか、この判断が難しく面白いところである。


一般的なリストと異なる点

自分のデッキのうち、一般的な青単スピリットのリストとの差異点について解説しておく。


《幽体の敵対者》 メインに4枚採用

一般的なリストには0~2枚程度入っている。優先度が低いカードのようだが、このデッキにはメインから4枚採用している。

正直とても強いカードというわけではないのだが、後述の《鎖霊》を採用していない都合もあり、2マナクリーチャー枠を埋めるカードとしては、現状ではベストだと思っている。

とにかく瞬速を持っているのが偉い。前述の通り、できるだけ打ち消しを構えたままターンを渡したいデッキなので、相手の動きを見てから展開できる瞬速持ちの価値は高い。

追加でマナを支払えばパーマネントをフェイズアウトさせられる効果もいぶし銀。味方を除去から守ったり、相手のブロッカーを消したりと器用な動きができる。
ただ、この効果を使おうとすると最低4マナかかるので、見た目以上に隙は大きい。無理に狙う必要はなく、序盤に2マナクリチャーとして出すだけでも十分である。


《厚かましい借り手》 メインに4枚採用


スピリットではないが、このデッキにとてもフィットしたカードである。なんとかして霊体化してくれないだろうか……。

まず《些細な盗み》のバウンスがこのデッキでは強い。バウンスはカードを手札に戻すだけなので時間稼ぎにしかならないが、この前のめりなデッキにおいては1ターンの猶予が非常に貴重である。

クリーチャーデッキが相手の場合、大抵はこちらは飛行/相手は地上でフルアタックし合うライフレースになる。そうしたシチュエーションにおいては、《些細な盗み》で攻撃を1回かわせるかどうかで勝敗がひっくり返ることも少なくない。
コントロール戦においても、打ち消せない《サメ台風》のトークンを消せるのが大きい。

加えてクリーチャーとしてもパワー3でクロックとして優秀。どんな相手にも完全に腐ることが無いので、メインから4枚投入している。
唯一の注意点は、スピリットではないので《鎖鳴らし》で呪禁を与えられない点(2敗)。


《呪文貫き》 メインに4枚採用

1マナでクリーチャー以外のあらゆる脅威を拒否できる(可能性がある)汎用性はやはり素晴らしい。

ラクドスに標準装備されている《致命的な一押し》と渡り合うには、2マナ打ち消しだとどうしてもワンテンポ遅れてしまう。黒が多い環境で除去をかいくぐるには、1マナカウンターがメインから多めに必要なのだ。

ちなみに《唱え損ね》も試してみた。追加要求コストが(2)か(3)かという違いは結構大きく、例えば相手の3ターン目に《致命的な一押し》を打ち消すことができる。

しかし、よく考えるとラクドス・ミッドレンジが3ターン目に《致命的な一押し》だけを使うパターンはかなり少なく、大抵はクリーチャーの展開を優先してくるので、役立つシチュエーションが限定的すぎると気がついた。

プレインズウォーカーを打ち消せないデメリットも大きく、結局《呪文貫き》に戻した。とは言え相互互換であり、好み次第では数枚散らして採用するのもアリだろう。


《隆盛するスピリット》 サイドに2枚採用

一般的なリストではメインに4枚採用されているが、このデッキではサイドに2枚にとどまっている。

理由は単純で、素の状態だと飛行が無いので攻撃が通りづらいのだ。
例えばこちらが後攻の場合、1ターン目にこれを出しても、2ターン目に《税血の徴収者》を出されるだけでもう攻撃できなくなってしまう。2マナ→3マナ支払って成長させれば飛行を得られるものの、除去されてしまうと大きくテンポを失ってしまう。

マナが余っているタイミングで成長させることができればスムーズなのだが、このデッキは基本的にカウンターを構えるかクリーチャーを展開するかしたいので、マナが余ること自体が少ない。マナフラッドした後半に引けば強いが、このデッキでマナフラッドしている時点で望ましくない展開であり、それを前提にするのは本末転倒である。

最初は自分もメインに4枚入れていたが、相手がクリーチャーを展開するデッキだと毎回4枚サイドアウトしていたので、そもそも最初から入れる必要がないのではという結論に至った。

ただしミラーマッチでは着地すると非常に強いし、《至高の評決》があるためあまりクリチャーを並べたくないアゾリウス・コントロール戦でも便利なので、特定の相手には強い。サイドボードこそがこのカードの輝ける場所だと思っている。


《鎖霊》 非採用

これも一般的なリストでは4枚入っていることが多いが、自分は扱いづらいカードだと思っている。

タップ効果はクリーチャーデッキとのライフレースで役立ちそうに見えるが、こちらのクリーチャーも2体タップしなければならないので、攻め手も減ってしまうのが痛い。
それならさっさと全員で殴って、少しでも早く試合を終わらせる方が良いという考え方だ。

瞬速が無いのも大きなマイナス。このデッキでは、自分のターンにクリーチャーを展開するという行為自体がリスキーなのだ。《霊廟の放浪者》《至高の幻影》レベルのカードパワーがなければ非瞬速クリーチャーは採用したくない。


《とんずら》 非採用

1マナでどんな除去もかわすことができる一見便利なカードだが、それなら《呪文貫き》の方が、除去以外の脅威にも対応できて汎用性が高い

こちらの攻撃に合わせて除去を撃たれた場合、《とんずら》で守ると攻撃が中断されてしまうのもマイナスだ。

打ち消せない《至高の評決》や《目覚めた猛火、チャンドラ》の全体除去を避けられる貴重な手段ではあるが、その場合でも守れるのは1体が精一杯なので、ならば終了ステップに瞬速クリーチャーを展開するのと大差ない。
役立つ場面が限定的な上に効果が小さく、裏目もある。見た目に反してハイリスクなカードだと思っている。


《幻惑の旋律》 非採用

対クリーチャーデッキ用だが、強いクリーチャーを奪うにはマナが必要で隙が大きく、速攻がないのですぐに攻撃にもいけない。ライフレースをズラすだけならバウンスで十分だと考えている。

軽くて強力なクリーチャーが多いボロス・ヒロイックが増えてきたら使えるかもしれない。パイオニアとエクスプローラーはまたメタゲームが異なるので、リストを流用する際は注意が必要だ。


おわりに

《隆盛するスピリット》や《鎖霊》の非採用など、一般的な構成とは少し異なるリストだが、現在のエクスプローラーのメタゲームに合わせた改造の結果であり、自分としては満足している。こういう細かいチューンナップがカードゲームの醍醐味だろう。